主日の福音12/09/09(No.609)
年間第23主日(マルコ7:31-37)
わたしたちすべてを父なる神に開くイエス

視覚障害を持っている方に情報を提供する団体が九州から集まり、研修する目的で先週は宮崎に行ってまいりました。集まってきた団体は、おもに点字図書館とか、ライトハウス(この場合のライトは、明るくするほうのライトです)という名前の付く団体でした。わたしが関わっているマリア文庫はその他もろもろの団体なのですが、皆さんしっかり研修で収穫を得てきましたし、わたしは理事会にも出席してきまして中身のある会合でした。

金曜日は12時ですべての研修内容が終了したので、マリア文庫の会員は宮崎でわたしたちと共に活動している会員の案内で昼食をご一緒させてもらい、さらに青島という場所を観光してきました。唯一、研修とは別の気分転換になりました。

さて、福音の学びを得ることにしましょう。イエスのもとに、耳が聞こえず舌の回らない人が連れて来られました。イエスは人々の真剣な思いに応えて、病をいやしてくださいました。3つのことについて触れたいと思います。

1つ目はイエスは病をいやす際に、とても細かい動作をされたということ。2つ目は、イエスが奇跡によってもたらしたことは、病からの回復だけではないということ。3つ目は、イエスがだれであるか、人々から理解されなかったということです。

イエスは、耳が聞こえず舌の回らない人に、細かい動作を行いました。「指をその両耳に差し入れ、それから唾をつけてその舌に触れられた。そして、天を仰いで深く息をつき、その人に向かって、『エッファタ』と言われた。」(7・33-34)

本来イエスが奇跡を行うのに、これらの動作は必要なかったはずです。それでもこのような細かい動作をされたのは、その人の重荷を、すべてイエスが引き受けてくださるという思いがあったのではないでしょうか。イエスはすべての人の重荷や苦しみを、一つひとつ身に受けてくださいます。

次に、イエスが奇跡によってもたらしたことは何か、ということですが、イエスの細かい動作の中にヒントがあると思います。実はイエスの細かい動作の中に、一見病の治癒とは無関係な動作が入っていました。それは、「天を仰いで深く息をつき」というものです。

この動作は、人を父なる神に結び合わせようとするものです。天を仰ぐ動作は神への祈りで、深く息をつくのは解放してあげたいという切なる願いの表れでしょう。イエスはこの「天を仰いで深く息をつく」動作で、単に病からこの人を解放するだけではなくて、人間全体を、喜びへと解放してくださったのです。イエスという方は、ただ病気を治す人ではなく、人を父なる神へと向かわせ、喜びへと解放する方なのです。

最後に、イエスはこの出来事を目撃した人々に、「だれにもこのことを話してはいけない、と口止めをされた」(7・36)とあります。わたしは、イエスが人々をそれほど信用しておられなかったのだろうと考えました。

結果的に人々は、イエスが行った奇跡だけに目を奪われてしまい、神を賛美することはできませんでした。イエスはあらかじめ、そのことをご存じだったのでしょう。それで、人々に口止めをされたのでした。わたしたちは、人々のようになってはいけません。イエスの奇跡に触れる時、神を賛美する者でありたいと思います。

イエスは「エッファタ」「開け」と言われました。その叫びは、「耳が聞こえず舌の回らない人」のためだけではありません。わたしたちすべての心に、「開け」と呼び掛けているのです。イエスのさまざまな教えや導きにもかかわらず、わたしたちの耳はイエスの言葉がよく聞こえていません。イエスの招きがあっているのに、わたしたちの舌は神を賛美するためによく回らないのです。

そんなわたしたちに、イエスは今も「エッファタ」「開け」と叫んでおられるのではないでしょうか。生活のすべてで、わたしたちはイエスの呼び掛けに耳を傾け、舌を使って賛美する必要があるのです。朝昼晩と食事をする時、イエスは「開け」と言っているのにわたしたちの舌は食事に先立って神を賛美しているでしょうか。

一日の始まり、また一日の終わり。イエスは「開け」と言っているのに、わたしの舌は神を賛美して一日を始め、賛美のうちに一日を終えているでしょうか。こうしてイエスは、わたしたちすべてに、「開け」と言って心を神に向けるように促しているのです。

わたしたち一人ひとりが、イエスによって心を開かれ、神を賛美する者となれるように祈りましょう。人と人との語らいも、心を開いて神を賛美する語らいとすることが可能です。いつも誰にでも、イエスが「開け」と言っておられることに気づき、神に結び合わされることができますように、今日のミサの中で祈り求めましょう。
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‥次の説教は‥‥
年間第24主日
(マルコ8:27-35)
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