主日の福音12/08/15(No.605)
聖母の被昇天(ルカ1:39-56)
主の僕・主のはしためとなる

聖母の被昇天のお祝い日を迎えました。今年は、堅信組の皆さんに病者の塗油の秘跡を考えるきっかけを今日の福音朗読から拾いたいと思います。今日の説教で、七つの秘跡のうち4つを取り上げたことになります。

さて、病者の塗油の秘跡は、まだある人々には十分理解されていない秘跡だと思います。かつては「終油の秘跡」と言われ、危篤の状態にある人に、1度だけ授けるものでした。

それが、今から50年くらい前に全世界から司教さまを集めて行われた会議、「第二バチカン公会議」で、「『終油』は、むしろ『病者の塗油』ともいうべきもので、危篤の状態にある人のためだけのものではない。したがって、信者が病気や老齢のために死の危険にある場合、この秘跡を受けるに適した時が来ていることはたしかである」(典礼憲章73)とはっきり言っています。

病者の塗油は、多くの場合、命の危険が考えられる人に授けます。病気であったり、老齢であったり、1度この秘跡を受けた人でも再び容態が悪化した場合、あるいは同じ病気が長引いて容態がいっそう悪化した場合、繰り返して秘跡を受けることができます。

だから、多くの場合急いで司祭は病人のもとに向かいます。この秘跡は、病人に聖霊の恵みを与えて、救いに関連して人間全体を助け、神への信頼を深めさせ、悪霊の誘惑と死の恐怖に対して抵抗力を強め、また病苦に耐えるだけでなく、これと戦う力を与え、さらに霊的な救いに役立つ場合は、体の健康を回復させ、また必要な場合は罪のゆるしをもたらし、全生涯の回心を全うさせる効力を持っています。決して、病人に終わりを宣告し、恐がらせるものではないのです。

そこから考えると、司祭も病者の塗油を授ける心構えを正しく持たなければならないかも知れません。司祭が、病者の塗油をいよいよこの人も最期だなぁという思いで授けるのは間違いだということです。もっと、病人に病気に耐える勇気と希望を与えるような授け方、心構えが司祭には必要だと思います。

今日の聖母被昇天に与えられた朗読は、マリアがエリザベトを訪問する場面から始まっています。マリアさまの行動に、わたしは病者の塗油を授ける司祭の姿を見つけました。マリアは出かけて、「急いで山里に向かい、ユダの町に行った」(1・39)とあります。

最終的に「マリアは、三か月ほどエリザベトのところに滞在してから、自分の家に帰った」(1・56)のですから、急いでエリザベトのもとに向かう必要はなかったと思うのです。それなのに、マリアが急いだのは、彼女が神の恵みを運んでいたからではないでしょうか。神の恵みを早くエリザベトと喜び合いたい。そんな思いから、先を急いだのだと思います。

病者の塗油の秘跡も、急いで出かけて授けに行きます。それは、マリアと同じ理由からです。神の恵みを運んでいるから、神の恵みを、病人と喜び合うために、急いで行くのです。

マリアの訪問を、エリザベトは喜びました。「わたしの主のお母さまがわたしのところに来てくださるとは、どういうわけでしょう。」(1・43)病者の塗油の秘跡も、授けてもらった人と秘跡の恵みを喜び合うことができるのが、本来の姿だと思います。

マリアが運んだ神の恵みは、エリザベトのお腹の赤ちゃんにも働きかけました。「あなたの挨拶のお声をわたしが耳にしたとき、胎内の子は喜んでおどりました。」(1・44)病者の塗油の秘跡も、病人の心と体のすべてを喜ばせる力を持っています。病者の塗油の秘跡は、何よりもまずイエスが病人を訪ねてくれている。この点を理解して欲しいと思います。

マリアはエリザベトの訪問でさらに救い主である神を喜びたたえる気持ちになりました。神はマリアを「女の中で祝福された方」としてくださいました。マリアがエリザベトを訪問したのは、神にお使いを頼まれたようなものです。お使いに行くのは身分の高い人ではなく、身分の低い人です。

けれども、身分の低い人の務めを引き受けたマリアを、神は今や高く引き上げてくださいました。神がマリアを、天まで引き上げてくださったので、マリアは今、ユダの町にいるエリザベトにだけでなく、神の恵みを届ける必要のある人すべてに働くことができます。天に上げられたことで、お使いに出るという、主の僕・主のはしための務めを、いつでも、どこにでも果たすことができるようになりました。

わたしたちも、からだも魂も天に上げられた聖母マリアを仰ぎ見て、マリアの姿に倣うべきです。マリアは、喜んで神の恵みを届けるお使いを果たしました。わたしたちも、お使いを喜んで引き受けましょう。病者の塗油の秘跡は、司祭にできるお使いの1つです。洗礼を受けたすべての人、とくに堅信組は、病者の塗油の秘跡を必要としている人のために、司祭のところに行って秘跡をお願いすることができます。それは、堅信組の皆さんにできる立派なお使いです。

マリアは今神の大きな計らいで、全世界の人に、喜んで神の恵みを運び、人々と神の恵みを喜び合う方に変えられました。マリアの姿に、わたしたちも進むべき道を重ねましょう。マリアに倣って、急いで神の恵みを運び、共に喜ぶ人になることを望みましょう。あわせて、戦争のない、平和な世界を全世界の人が目指して生きるように、ミサの中で聖母の取り次ぎを願って祈りましょう。
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‥次の説教は‥‥
年間第20主日
(ヨハネ6:51-58)
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