主日の福音07/09/23(No.318)
年間第25主日(ルカ16:1-13)
永遠の価値あるものに一つひとつを結びつけよう
この世の富の一つ、株のことから入りたいと思います。アメリカがくしゃみすると、世界中が風邪を引くのでしょうか。ニュースを何気なく聞いていると、アメリカで住宅ローンが焦げ付いて株価が下がると、あっという間に世界中の株価が同時に下がって、世界中が影響を受けてしまいます。(みなさんも、持っている株でかなり損を出したことでしょう。持ってませんか。)
さて今日の福音朗読の中で、イエスは2つの形で「永遠のもの」を目指すように促します。1つめは、不正な管理人のたとえを話しながら、この世の富について、賢く利用しなさいと仰います。もちろん、賢くとは「神様の前で」賢いとほめられるような使い方をしなさいということです。
「不正にまみれた富で友達を作りなさい」(16・9)。イエスが例として示された、「神の前に賢い」使い方です。富を増やすとか、富を守ることに重きを置くよりも、手に入れた富で、友情とか、絆とか、信頼を築くことに心を向けるようにと仰います。人との豊かな出会い、かけがえのない絆を結ぶことに役立てるとき、富を神の前に賢く使っていることになるのです。この世のものを眺める「見方」について、貴重な勧めではないでしょうか。
あらためて考えてみると、やはりこの世で長く続くものは、人と人との出会いを通して築き上げられた信頼関係や絆だと思います。世界同時株安などのニュースで分かるように、「不正にまみれた富」と言われている、さまざまな資産・財産は、一瞬で消えてなくなるのです。
一瞬のものは、確かにその時は美しく、輝いています。今日、町民運動会ですが、運動会のあらゆる場面に、一瞬の輝きがちりばめられています。それを映像に収めて、長く保存することも可能でしょう。けれども、たとえ映像に収めても、昔を懐かしむことぐらいにしか役に立たないのです。
イエスは、一瞬の輝きではなく、永遠に続く輝きを見失わないようにと私たちに注意を呼び覚ましているのです。イエスは私たちに、最後にこう呼びかけます。「あなたがたは、神と富とに仕えることはできない」(16・13)。私たちがしっかり見つめておかなければならないのは、一瞬のものではありません。永遠の輝きを見据えて、生活を組み立てて行くべきです。この世のもの、一瞬の輝きは、むしろ、この永遠の輝きに従わせる。この世の宝は、人と人との絆を結び、最後に永遠の命を得るために利用するのです。
2つめに、イエスのいましめは、小さな事の積み重ねが大きな結果につながるという形でも繰り返されています。朗読された箇所の10節と11節で次のように呼びかけています。「ごく小さな事に忠実な者は、大きな事にも忠実である。ごく小さな事に不忠実な者は、大きな事にも不忠実である。」「だから、不正にまみれた富について忠実でなければ、だれがあなたがたに本当に価値あるものを任せるだろうか」。
これらは、限りあるものに忠実であれば、いつかは永遠のものを任せてもらえるといういましめです。この呼びかけを考えるためには、生活の中のうまくいかないことを例にすると分かりやすいと思います。
自分の生活に何かうまく行かないことがあって、それはもとをただせば小さな事の積み重ね、小さなことが複雑に絡んで起こっているということがあります。こんなとき、いちどに解決してしまおうともがくことはないでしょうか。あるいは、いちどにまとめて解決するまで、結局すべてを棚上げすることはないでしょうか。
何もかも一度に解決しようと思っても、そう簡単ではありません。一つずつ、できる小さなことをできること順に、忠実にこなすしかないのです。それが、ひいては大きな結果を成し遂げることになるのではないでしょうか。
そのさい、イエスは一つの規則に従うように注意を向けます。それは、1つめの結論に通じます。「あなたがたは、神と富とに仕えることはできない」ということです。悪いことを数々しながら、良い人になろうというのは虫の良い話で、一つずつすべきことを果たして自分を造り上げ、この世でも、後の世でも唯一の主人である神に喜ばれるほうを選んでいくということです。
はじめに取り組むのは小さな事かも知れませんが、それでも忠実に神に喜ばれる方を選び続ける、この基本を守れば、私たちはできることから一つずつ解決し、この世のものから最後には永遠のものへと生活を向けていけるのだと思います。
神に褒められる生き方に、一瞬の輝きはないかも知れません。また、階段を何段もまとめて登るような急激な進歩もないかも知れません。けれども、永遠の、深みのある輝きを、神様はその人に与えてくださるのではないでしょうか。ごく小さな事に忠実な人は、やはりどこかに大きな事を成し遂げる可能性を感じさせるのではないでしょうか。
私は、一瞬のものばかりを追いかけていなかったでしょうか。一瞬のものに囲まれて生きてきたのではないでしょうか。あるいは目の前のことを見もせずに大きな夢だけを追いかけてなかったでしょうか。これまでの自分を振り返りながら、今週一週間を新たな気持ちで歩んでいきましょう。
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‥次の説教は‥‥
年間第26主日
(ルカ16:19-31)
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