三位一体の主日(２００５年)

短い朗読箇所でした。今日の朗読から、三位一体の主日に合わせて、御父・御子・聖霊の栄光を等しくたたえたいと思います。

今日の朗読から三位一体の神様を考える鍵を探すとすれば、神が、御子を世にお与えくださったという朗読のはじめの部分だと思います。「神は、その独り子をお与えになったほどに、世を愛された」（３章16節）。ここから、何かをつかみたいと思います。

取り上げたい箇所の中には、私たちがふだん使う言葉、生活の中に自然と現れることが含まれています。それは、「与える」ということです。私たちはふだんから、もののやりとりをしたりして暮らしています。ここに、三位一体の神を考える手がかりがあるのでしょうか。

何か、ものを与えるというときのことを考えてみましょう。そこには与える人とそれを受ける人がいて、与えるものがあります。何も与えないというのであれば話は別ですが、何かを「与える」時、必ずこの三つが必要になってくるでしょう。

では、「神は、その独り子をお与えになったほどに、世を愛された」この語りかけの中では、先に示した三つの条件は、どのような関わりをもっているのでしょうか。私たちがふだん経験していることと、似ている所や、違いがあるでしょうか。そのような見方から、今週お祝いしている三位一体の神様の姿に近づいてみることにしましょう。

いろんなことを考えることができますが、まず、神様は「与えてくださる神」だと言えます。何も与えないとか、奪い取る神であれば、今日の朗読のように「独り子をお与えになる」ということすら成り立ちません。私たちが神様を思い描く時に、まずはじめに「与えてくださる神」だということに信頼し、期待してよいのだと思います。

次に、神は何を与えてくださるのでしょうか。私たちは心ある人たちからいろんな頂き物をしますが、そのことと比べてみましょう。知っている人からの頂き物は、そのほとんどが良いものだと思いますが、結果的にいらないものであったり、同じ物が増えたりということもあるのではないでしょうか。

神様が与えてくださる物はどうでしょう。神が人間に何かをお与えになる時、結果的には必要ない物、すでに持っていて二重になるものをお与えになったりするのでしょうか。私は、それはあり得ないと思っています。神様は、私たちが今必要な物、すでに手に入れているものなどすべてをご存知であり、私たちにお与えくださる物は一つとして不必要な物はなく、また二重になってしまう物もないはずです。その点、神が与えてくださる一切の物に信頼を寄せて良いわけです。

また、神がお与えくださる物には、等級というものはあるでしょうか。あの人は特別に大切な方だから、デパートで買い物をして贈り物を用意しよう、あの人は気心知れた人だし、包み紙よりも中身を重んじる人だから、デパートに売っているものをもう少し安く手に入れて贈り物にしよう。私たちはそんな使い分けを当然しています。神様はどうなのでしょうか。同じように等級分けをして、同じ物を与えるにしても人によって等級の違うものを与えておられるのでしょうか。

まったくそのようなことも考えられないと思います。人間に命をお与えになる神は、いろいろ等級に差を付けて与えたりするはずがありません。すべての人間に、かけがえのない命を、等級など付けない一つひとつ最上級の命を、私たちにお与えくださるのではないでしょうか。

ここまで考えると、「神は、その独り子をお与えになったほどに、世を愛された」という呼びかけは特別な意味を持ってきます。神は、ご自分の独り子を、二つとないものとしてお与えになり、またすべての人に公平に与えられるものとしてお与えになるということです。私たちはこれまで、御子イエスキリストがこの世においでになったことを、二つとない出来事として、すべての人に与えられる大切な出来事として、考えてきたのでしょうか。考え直したいものです。

ここから、神様がお与えになる時にだけ当てはまる特別な点を取り上げてみたいと思います。そしてこの特別な点は、三位一体の神様を考えるのに役に立つと考えています。少しずつ話を進めましょう。

神がお与えになった独り子は、結果的にいらないものではなく絶対に必要な物で、すべての人に公平に与えられることを話しましたが、もっと踏み込んで考えると、私たちに与えられた御子キリストは、神がお与えになるものの中でいちばんすぐれたもの、いちばん良いものなのではないでしょうか。

そして、このいちばんすぐれたものとは、私たち人間の世界ではいろいろあるものの中でいちばんすぐれたものかも知れませんが、神にとっていちばんすぐれたものとは、「神ご自身」以外にないのではないでしょうか。そうであれば、神がこの世にお与えくださった独り子は、神ご自身でもあることになります。イエスが弟子たちに話してくださった通り、「わたしと父とは一つである」（ヨハネ10・30）ということなのです。

御父と御子がまったく一つである、神が与える最高のものはご自身であるから、御父と御子は唯一の神であるということです。そして、最愛の御子をこの世にお与えになりますが、与える相手であるこの世を、この上なく愛しておられたことになります。なぜなら、神がお与えになることのできる最高のものを、この世に与えてくださったからです。この最高の愛もまた、神の思いそのもの、神ご自身ということではないでしょうか。

こうして、「神は、その独り子をお与えになったほどに、世を愛された」という招きの言葉の中に、唯一の神がおられることを学ぶ手がかりを見つけました。神は与えようとご計画されたこの世に対して、最高のもの、神ご自身をお与えになりました。与えようと計画された神の思いもまた、神ご自身と言えるものですから、御父・御子・聖霊はこの世に最高のものをお与えになる唯一の神ということなのです。少し、込み入っているかも知れません。

最後に、私たちの生活の中から一点振り返りの場面を持つことにしましょう。神は人間に何かをお与えくださる時、常に良いもの、かけがえのないものをお与えになることを学びました。その中でも御子イエス・キリストを与えていただいたことは、これ以上にない最上の贈り物です。この点を、私たちは生活の中でどのように考えるべきでしょうか。

ふだん私たちは大切な人から何かをいただいた時、お返しを考えるわけですが、神様に対しても何かお返しのようなものを考えても良いのではないかと思います。何を神様に返すことができるでしょうか。本来は返すことのできるものなど何もないのかも知れませんが、この与えられた命を、最後にお返しとして用意するのがふさわしいのではないかと思います。

お返しはできるだけ良い状態で届けるのが筋です。高級な品物の中には、長い時間をかけて完成される物があります。そのように、私たちも与えられた人生という時間を使って、より完成されたものとなって神様に自分をお返ししたいものです。何度も試練や誘惑を乗り越え、神に喜ばれる言葉と行いを身につけて、精一杯お返しできるものになりましたと、神様に最後にいうことができる人生でありたいと思います。

神ご自身を与えてくださる三位一体の神を今日のミサの中でたたえつつ、私自身はお返しとして最後に神様のものとなれるように、日々の生活を見直す一週間といたしましょう。