主日の福音2002,8,11
年間第19主日(マタイ14:22-33)
弟子になるためには闘わなきゃ。現実と

今月は、「弟子を鍛えるイエス様」という見方で福音書を考えようとしています。先週の課題は、「イエス様を固く信じる弟子は、ほとんど望みのない時にも望みをかける」ということでした。今週は、課題から先に示しますと、「イエス様の弟子になる道のりの中では、自分との闘いがある」ということです。

まず、自分との闘いで求められることは、自分にはできないという気持ちに尻込みせずに、イエス様に招かれたら進んで引き受ける、ということです。朗読の中で、ペトロは水の上を歩いておられるイエス様に、「あなたでしたら、わたしに命令して、そちらに行かせてください」(28節参照)と願いました。願いましたが、ペトロには自信はなかったと思います。自分の願っていることが、普通では考えられなかったからです。

ペトロは、自分と闘う必要がありました。常識では考えられないのですから、常識を取るか、イエス様への信頼を取るかの闘いがあります。時間としては、「夜が明ける頃」となっていましたが、ようやく目が利き始める時間帯です。自分の目を信じるなら、水の上を歩いているのですから、そこにいるのは幽霊です（見たことはないでしょうが）。けれども、目の前の人は「わたしだ、イエスだ」と言っています。これも闘いだったでしょう。

また、「いやいや、それでもイエス様のほうを信じよう」そう思って水の上を歩き始めますが、強い風に気がついたとあります。強い風は、ペトロにとっては経験があり、常識を働かせると危険なのです。いったん、イエス様のほうを信じようと決心しても、一二歩進み出してからも、さらに信じ続けるという闘いが待っているのです。

こうして、イエス様はまことの弟子を招くに当たって、自分との闘いを引き受ける者を探しておられます。「自分との闘いに完全に勝利する者」を探しておられるのではありません。自分との闘いは、負けるかも知れない。でも、逃げないで自分自身の闘いを引き受ける者には、手をさしのべ、励ましてくださる。そして一人では無理だなと思う時は、助け起こしてくださるのです。

ペトロはイエス様を信じる前に、自分の中にいくつもの限界を決めていたので、イエス様を深く信じることができませんでした。自分に限界を置くと、そこで自分の才能や、可能性は止まってしまうことがしばしばあるわけです。最近すばらしいレポートを見ることができたので、皆さんと分け合いたいと思います。

皆さんも見たかも知れませんが、カナダに住むライアン君という少年の熱意が、人々を動かし、アフリカのとある国に井戸をプレゼントして、不衛生な飲み水で命を落とす多くの人を助けたという話です。

ライアン君は、通っていた小学校で、アフリカのウガンダに井戸を掘ってプレゼントするためには、70ドルが必要だと聞いて、そこでもう「うわあ、大変だ」と思ったわけですが、家の手伝いをして70ドル貯めました。けれども実際には2000ドルが必要と知り、支援の輪が広まって2000ドルを集めます。

ですがそれでも、今すぐに井戸を掘るためには２万５千ドル必要と言われ、カナダ全土を動かして資金を調達しました。「ライアンの井戸」と名付けられた井戸は、３年で３０本にもなったそうです。

小学生のライアン君は、「これが限界だ」と自分に限界を置かずに、越えなければならない壁がどんなに高くなっても、目標のために努力し続けることを教えてくれました。「これが自分の限界だ」そう思ってしまうと、それ以上何かできないかとか、ほかの方法はないかとか、考えようとしなくなるのでしょう。けれども、カナダのライアン少年は、夢をあきらめない、自分との闘いに挑戦し続けて、大きな目標を成し遂げました。

こんなすばらしい少年もいるわけです。イエス様の弟子になる、イエス様に生き方を合わせようとするなら、だれもが自分との闘いを引き受けなければいけないのだと思います。

例えば生活に祈りの時間を必ず取る人は、家庭が沈みかけた時、イエス様に助けを求めたいと思っているわけです。けれどもそこには、自分との闘いがあります。眠たいし、面倒くさいし、全員が信者でなければ気恥ずかしいということもあります。最初から闘わない、敵前逃亡では、イエス様も助けようにも助けられないでしょう。

体の命が沈みかけている時に祈りを思い出す人、秘跡を思い出す人は、イエス様の弟子なのではないでしょうか？けれども突然その時にイエス様への信頼が増すわけではありません。病気の時も健康の時も、順境にあっても逆境にあってもイエス様に心と体を向ける、日々の闘いがあって、危険な時にも力になってくださるのではないでしょうか。

誰だってイエス様の弟子だと思うのです。あとは、自分との闘いを引き受けるかどうかではないでしょうか？ぜひ自分に限度を置かずに、イエス様へ心を開いて、私の生活には、イエス様がどうしても必要だと、証ししていきましょう。私には、手をさしのべてくださるイエス様がいると、証しできる人となれるよう、ミサの中で恵みを願ってまいりましょう。

来週の福音朗読
年間第20主日(マタイ15:21-28)